吃音治療のための流暢性形成訓練の正しいノウハウ


吃音治療において、昔から主流な方法があります。流暢性形成訓練です。これは文字通り、流暢な話し方、どもりにくい話し方を身につけるためのトレーニングのことです。吃音 流暢性形成訓練

リラックスした呼吸を身に付けたり、ゆっくとした落ち着いた話し方を練習したり、唇や顎、舌などのスピーチマッスルを弛緩させ、脱力するスキルを習得したり、、、。様々な流暢に、楽に話すためのスキルがあります。

 

これはとても有効な方法で、現在でも主流な訓練法の1つです。正しく行えば吃音を治すことに大きく貢献してくれます。しかし、間違った方法で行うと成果が出ないばかりか、逆に吃音が酷くなる危険性も含んでいます。

そこでこの記事では、流暢性形成の正しい方法論や考え方について解説をします。そしていくつかの代表的なスキルをお話します。

あなたが楽に、流暢に話したいと思っているなら、きっと役に立つ情報だと思います。

 

1. 吃音治療のための流暢性形成訓練の目的

 

まず、流暢性の形成訓練を行う目的を明確に理解しておいてください。これを知っておかないと、間違った方向に進んでしまい、吃音治療の効果があまり期待できなくなります。ですので、最初にここを腑に落としてください。

 

1-1. スキルそのものを使うことが目的ではない

 

吃音を治すための流暢性のスキルには、様々なものがあります。ゆっくりとしたペースで話すとか、音を引き伸すとか、呼吸を変えてみたり、など。しかしそれらのスキルを使うこと自体が目的ではないのです。

ここを誤解してしまわぬように注意してください。なぜなら、、、

 

1-2. 現実では使えない・・・?

 

流暢性のスキルは現実、つまり日常生活においてそのまま使うことは、なかなか難しいものです。例えば音を伸ばしてゆっくり話す技術がありますが、そのままでは非常に極端な話し方です。もちろん練習では型通りに、極端にやることが必要でしょう。特に最初の段階は。

しかしそれをそのまま日常の会話等で使うことには、少し無理があります。確かに「あーーーーーーーーーりがとう」のように話せば吃音は出ません。しかしあまりに抵抗が大きいでしょう。聞き手も不便です。

だからこそ、

 

1-3. 実践で使える形に仕上げる

 

これが重要なフェーズになるのです。学んだ流暢性のスキルを、実践形式にブラッシュアップすること。だから現実世界の会話では、学んだ技術を「捨てる」必要があります。捨てる、という言い方は極端ですが、要は型通りにそっくりそのまま使おうとしない、ということです。削減する必要がある。実践で使える形に応用して使わないといけない。

なので流暢性形成訓練の目標は、最初は流暢に、非吃音状態で話すための感覚を身に付け理解するために多くの技術を使用し、そして時間をかけて少しずつそれを実践で使える形に仕上げることです。技術を削減し、自然に聞こえるような形にしていくのです。

最初は型通りに、きっちりとそれを練習していくことが大切ですが、最終的にはそれをそのまま使わなくても話せるような状態にしていくこと、それが大切です。

 

2.  母音を伸ばしながらのスロースピーチ

 

このスロースピーチ、ゆっくり話すという技術は他の全ての流暢性のスキルの土台になります。速”すぎる”発話ペースは吃音を増大させますから、スローなペースで話すことは重要です。しかし、全ての会話においてゆっくりとしたスローな話し方をしなければいけない、というわけではありませんし、それが最終目標ではありません。

 

2-1. 流暢に話すための基礎固め

 

例えば、新しいスポーツ、競技を始めるところを思い浮かべてください。最初はゆっくり正しいフォームや筋肉の動きを学びますよね。そしてその後、これらの筋肉の動きをマスターして、徐々にスピードを上げていくと思います。

それと同じことだと思ってください。ゆっくり話すというのは、流暢に話すための感覚を掴む、いわば基礎固めだという認識でいてください。ゆっくりとしたペースで話すなかで、上手く、流暢に話すためのコツ・感覚を掴んでいくことが目的なのです。ゆっくり話すこと自体が目的ではありません。

なので、慣れてきたら実践で使えるようにするために、普通の速度に上げていきます。

 

2-2. ゆっくり話す(スロースピーチ)の実践法

 

基本的には、単語の最初の母音を伸ばしながら、ゆっくりとしたペースで話す練習を繰り返します。

  •  「わたし は にほんじん です」

このようなぶつ切り状態では流暢性は向上しません。ですので、

  • 「わぁ〜〜たしはにぃ〜〜ほんじんでぇ〜す」

このような、母音を引き伸しつつ、全体的に遅いペースで発話することが重要です。これを練習し、流暢に言葉を出し続ける感覚を感じ取ることが重要です。

最初は長く引き伸して、全体のペースも極端に遅くても構いません。ですが、慣れてきたら少しずつ速度を上げて練習していきましょう。引き伸す感覚を短くして、速度も普通の会話の速度に近づけて練習するのです。

そのように段階を踏んで、着実に実践で使える形に仕上げていってください。でも最初はとにかく基本に忠実に、長く引き伸して、ゆっくりゆっくり話してください。そこで流暢に、非吃音状態で話す感覚を掴んでいれば、普通の速度に戻したとしてもその感覚を使って話せることでしょう。

 

3. リラックスした呼吸

 

呼吸も、吃音の状態に大きく関わっています。発声は十分な呼気の流れが確保できていなければ、それが非常に難しくなります。呼吸の仕方1つで、言葉に詰まってしまうのか、それとも非吃音状態で話せるのか、それが大きく変わります。

ここでは吃音治療に有効な呼吸法についてお伝えします。

 

3-1. 意識的に横隔膜呼吸に切り替える

 

呼吸には胸式呼吸と腹式呼吸(横隔膜呼吸)があります。吃音状態になりやすいのは、胸式呼吸です。これは確かに肺の容量は増加しますが、デメリットも多いのです。胸部の筋肉を緊張させることになるので、その周辺の発語筋(スピーチマッスル)の硬直を招きやすいことがあります。喉がブロッキングされやすい呼吸なのです。

ですので、基本的にはお腹で呼吸をする意識でいたほうがいいでしょう。お腹、横隔膜に意識とエネルギーを集中させて、ゆったりとリラックスした呼吸を心がけててください。そして重要なこととして、

 

3-2. 吸うことよりも吐くことを重要視する

 

これがとても大事なところです。吸うよりも吐くことを意識してください。よく言われる間違いが、「深呼吸をしなさい」というものです。大きく息を吸ってから話し始めなさい、というものですが、なぜこれがいけないのか?

それは息を思いっきり吸い込むのを意識すると喉がブロックされやすいからです。圧力がかかってしまうわけです。何か重い物を持ち上げるときはいいかもしれませんが、話すときには適切ではありません。

それよりも吐くことのほうを重要視してください。

お腹に力を入れて大きく息を吐くことで、あなたの体全体がリラックスします。そして最も重要なのが、あなたの声帯がリラックスし、さらに唇、顎、舌などの筋肉も弛緩していきます。声も安定します。

このような呼吸のポイントを意識して、雑誌や本などのテキストを読む練習をしてください。息を吐くことを重要視します。言葉を話すという意識でいるよりは、息を吐く、という意識でいてくれたほうが、非吃音状態で話すためには有効です。

 

 

4. 流暢に話すための発声のポイント

 

では、次に楽に声を出すための発声のポイントを説明します。基本的な事柄ですが、吃音を減らすために重要な原則ですのでよく理解しておいてください。

 

4-1. 発声のための2つの条件

 

まず発声には2つの条件が必須になります。

  1. 肺から空気を解放すること(呼気の流れを作る)
  2. 声帯を閉じて振動させること

 

この2つが揃うことで声が出せるわけです。まず何よりも息の流れが確保できていることが絶対です。十分な呼気がなければ、どうやっても声は出せません。だから息をしっかりと吐くことが最優先です。

そして声帯が閉じることで、息の流れによって声帯が振動して「音」になるのです。

 

4-2. 声帯の過度の緊張を緩和させる

 

あなたの声帯が過度に緊張して力が入っている状態では、話をするのは難しいです。呼気の流れが遮断されるからです。その結果言葉が詰まってしまうわけです。

ですので、その声帯の緊張をリリースしてあげる必要があります。具体的には、息を少し吐いてみてください。声帯が緊張して話し辛いと思ったら、まず息を吐くのです。そうすることで、声帯の筋肉を弛緩させることができます。そうしてから話し始めるのです。

 

4-3. 息を吐いて声帯の緊張を緩めてから話し始める

 

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この図はあなたの声のボリュームを表したチャートです。山なりになっています。最初から声帯を強く緊張(振動)させて大きな音を出さない、ということです。最初は息を吐きます。息を吐いて、それから徐々に徐々に声帯を振動させていきます。ピーク、つまり通常の会話レベルの音量に達したら、沈黙に到達するまで今度は徐々に声帯の緊張を減らしていきます。

とにかく大事なことは、まずは息を吐く、ということです。息を吐いて声帯の緊張を緩めてから話し始めてください。もちろん声を出すためには声帯を緊張させて振動させる必要がありますが、最初から緊張させていてはいけない、ということです。

 

 

5. スピーチマッスルの緊張を削減

 

非吃音状態で話すには、スピーチマッスルの脱力は欠かせない要素です。いかにして力を抜くか、、、それは大きな課題です。上手く脱力が出来れば吃音が出る確立は大きく減らせますから、ここは重要です。

筋肉の弛緩のためにはいくつかのスキルがありますが、ここでは特に有効な方法をお伝えします。

 

5-1. ソフトな発声を目指す

 

吃音者は話すとき、唇も舌も、かなり強い力が入っていることが多いです。ですので、それを少しでも柔らかく、ソフトな状態に持っていくことが出来れば吃音の状態は大きく変化します。

正しい口の形や舌の動きなどを矯正することも言われますが、しかしほとんどの吃音者はそれについては自然と会得していることが多いです。どういうふうに口や舌を動かせば発語できるかといった、自分なりのコツは理解しているものです。

だからあとはいかにして、より少ない力でそれを行うのか、、、ということだけなのです。

 

そのための方法として、ソフトに発声するというものがあります。文字通りソフトに、柔らかく発声するのですが、ポイントは完全に近い形で脱力させることです。発語器官の力をゼロに近づけます。

もちろん完全にゼロにすることはできませんが、そこに近づけるという感覚を持つことが大切です。

 

5-2. 優しく、柔らかく・・・

 

出来る限り、優しく、ソフトに、柔らかく発語するようにしてみてください。口をしっかり大きく開けて話すようにしなさい、ということも言われますが、あまり気にしなくても大丈夫です。それを意識することで、かえってスピーチマッスルに力が入ってしまうことが多いからです。

それよりも、とにかく脱力してソフトに発声することを心掛けてください。「しっかり話そう」とは思わずに、力を完全に抜いて、顎が外れた人のように”ふぬけた”感じで話してみるといいです。それでスピーチマッスルが脱力している感覚を感じてください。

楽に話せる感覚を掴んだら、後はそれを繰り返し、繰り返し反復練習をして脳に定着させることです。

 

 

吃音を治すための流暢性形成訓練:まとめ

 

流暢に話すためのトレーニングは、非常に有効な吃音治療法です。ただ、方法や考え方を間違えないことです。正しい理論と方法論に基づいて行わなければ成果は期待できませんし、逆効果にも成り得ます。

そして、このスキルをそのまま使えるとは思わないことです。多くのスキルはそのままでは現実では使えません(もちろん、そのまま使えるものもありますが)。あくまで流暢に、楽に話すコツや感覚を理解し、掴んでいくことが目的であって、実際に使うときにはより実践的な形に応用して使う必要があります。

しかしまずは基礎固めとして、型通りにキチンと練習してみてください。ここに書いた基本的な内容だけでも、十分に流暢性の向上には役立ちます。


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